3月10日の会の報告です。

 私の「縄文研究新しい波」は、昨年暮れから今年にかけて開催された縄文展や縄文をテーマとした単行本を分析して、最新の縄文研究の動向を検討しました。縄文という用語はアメリカの考古学者E.S.モースの提案を受けて、昭和10年に定着した用語です。明治以降の日本の学問の手本は西欧にあった。しかし、ここに根本的な疑問が生じます。西欧近代の学問が日本の古代文化を読解するのに有効か、どうか、という問題です。明治以降、「脱亜入欧」の掛け声で、日本は西欧近代を手本として追いつけ、追い越せの国の方針に従って学問分野も努力をつづけました。その結果、日本の近代化は進みましたが、しかし、そのマイナスの遺産も大きかった。縄文研究の停滞もその一つです。
 縄文は蛇文であり、円形文は太陽です。この二つの信仰を主として台湾原住民文化で証明しました。蛇と太陽に対する信仰は地球規模に広がるが、ことに東南アジア、東アジアにかけて顕著です。日本の南方系縄文人、弥生人はこの蛇と太陽の信仰を持って、主として、中国大陸から朝鮮経由で九州へと、台湾を経由して八重山諸島へと、渡ってきた人たちでした。そのために台湾原住民が現在も保持している蛇と太陽の信仰は、文献的にも資料的にも大きな限界を抱えてその解明が十分ではない日本の縄文文化、弥生文化を考察するこのうえない参考資料となります。
 第二部の藤澤茜さん「浮世絵の下絵と制作過程」は、氏が最近の海外や日本の調査で入手した資料、ことに千代田区の三谷家から出た下絵の分析によって解明された幕末の浮世絵の制作過程の精緻を極めた分析でした。
 個人の絵師の名前を付して流通した浮世絵が実は下絵の段階から、版元、共同絵師、彫師、摺師、役者絵なら役者などとの、密接な連携の基に制作された事実を、具体的資料を提示されながら説明されました。
 氏にはすでに『浮世絵が創った江戸文化』(笠間書院)という先行する労作があります。今回の発表はその内容を補完する精密を極めたご発表でした。

 明年の日程が決まりました。日曜日午後2時開始です。しかし、ご存知のように、コロナ・オミクロンの新形が依然猛威を失っていませんので、中止、延期の可能性もありますのでご注意ください。この欄でお知らせします。
 
 2024年日程 すべて日曜日午後2時開始です。講師と演目は決定次第掲載します。

4月21日・5月26日・6月23日・7月21日・10月6日・11月10日・12月15日
 
 
4月21日  
 1 舞踊の変身                   諏訪春雄 
 2 
見立の文化から見る心身 東洋大学文学部教授   有澤晶子

   5月26日
 1 アジアの浦島伝説                諏訪春雄  
 2 浦島古伝と古事記     奄美民族文化研究   配山 実
   
  6月23日  
 1 日本人の神・祭り・芸能・芸道          諏訪春雄


参加費 千円(資料代、茶菓代を含む)

会場 黛ビル4Fホール
 〒107-0052 
 東京都港区赤坂3-10-3  
 TEL 03-3583-3633・3606
 FAX 03-3583-3639


[地下鉄赤坂見附駅赤坂方面出口から徒歩3分]